マル経融資(小規模事業者経営改善資金)の検討をしたので、情報をまとめました。
日本政策金融公庫(以下公庫)の融資制度の一環で、小規模事業者(対象要件を参照)が対象。特別金利(毎月変動)が適用されるため、通常の利率より低い利率(決定時の率で固定)での融資が可能。
詳しくは公庫サイト→マル経融資(小規模事業者経営改善資金)
特徴
・無担保・無保証 ←保証料不要!
・返済期間10年(据置期間2年) ←長い!
・融資限度額2,000万円まで
・商工会・商工会議所(以下商工会等)の推薦が必要(申込窓口も、商工会等)
対象要件
・従業員20人以下(宿泊業と娯楽業を除く商業・サービス業は5人以下)の法人・個人事業主
・直近1年以上、商工会等の地区内で事業を行っていること
・半年以上、商工会等の経営指導を受けていること
・各種税金を完納していること
申込手順
①商工会等の会員になる
~半年以上~
②商工会等の窓口で相談
③マル経融資に必要な申込書類を作成
④商工会等の窓口に書類提出
⑤商工会等が審査(月1回)
⑥商工会等から公庫に推薦
⑦公庫の審査
⑧公庫から事業者へ融資実行
・商工会等の会員であっても、審査の結果次第で推薦を受けられない場合があります。
・また、推薦があっても公庫の審査で却下となる場合もあります。
・商工会等の管轄内の地域に「事業所」を有することが要件です。(居住のみは不可)
・団体信用生命保険(以下団信)の対象外です。
・特別金利の適用に加え、自治体独自の利子補給制度を併用できる場合があります。
この場合別途手続が必要です。(商工会等の窓口で案内される場合が多いと思います)
マル経融資、要件が合うのならば、積極的に使うべき制度と思います。
一般的な融資より利率が低く、かつ保証料も不要、さらに利子補給もある場合、非常に有利な条件となります。
また運転資金・設備資金とも返済期間が10年以内(公庫の一般貸付だと運転資金は5~7年程度)という点も、資金繰りの点から見てメリットが大きいです。
なお利率については、毎月見直しとなるので、特に現在(2025)のように市況がかなり激しく動いている時期の場合、管轄の商工会等で定期的に確認しておくことをお勧めします。
そういった意味でも、急ぎの融資ではなく、ある程度計画的に準備を進める場合に使う制度です。
(急いでいる場合は公庫の一般貸付が一番早い、と個人的には考えています)
対象要件を見たときに「半年以上、商工会等の経営指導を受けていること」、これがどういった内容なのか謎だったので、山梨県内の複数の商工会等の窓口で照会してみました。その結果各窓口とも、商工会等の会員となって定期刊行物に目を通している、時々相談に来ている、程度の関係性があればよいとのことなので、これもあまり難しい要件ではないかと思います。
但し、マル経に関して、個人的に注意が必要と感じたのは次の2点です。
①商工会等の管轄内の地域に「事業所」を有することが要件です。(居住のみは不可)
②団体信用生命保険(以下団信)の対象外です。
①商工会等の管轄→地域がずれてると使えません
商工会等、基本的には自治体ごとに管轄があり、通常は事業所のある自治体で加入するのですが、実際には管轄外の商工会等の会員となっている場合、けっこうあります。例えば事業所でなく自宅近くの商工会等に入っている、事業所が移転してしまったが移転前の商工会のまま、また「商工会議所」(甲府)・「商工会」(甲府以外の自治体)の別によって提供するサービスが微妙にずれるので、自分の必要なサービスを求めて隣の自治体の商工会等に入っている、etc。このような場合、商工会等の会員で、事業内容が優良であっても、管轄違いでマル経の推薦を受ける事ができません。
これは商工会等の担当者の方の裁量ではなく、公庫の規定上そのように決まっているとのことです。
では、マル経を求めてわざわざ新しく商工会等に加入すべきか?これは、商工会等の年会費(6,000~12,000円程度)と、マル経で融資を受けた場合の利息差額やその自治体の利子補給制度の有無で判断することになるかと思います。
なお現状(2025)、私の近くの自治体では、昭和町・甲斐市・南アルプス市・韮崎市・北杜市には自治体独自の利子補給制度があり、一方甲府市にはこのような制度がないようです。利子補給の割合や年数も自治体によって異なるので、この点ご自身の状況にあわせて検討されることをお勧めします。
②団信は重要?→個人事業の場合は一考を
団信(だんしん)、個人事業で借入をする場合によく聞く制度です。
事業資金の返済は長期にわたりますので、返済途中で事業主が死亡・高度障害になった場合に備えて、金融機関側が用意している生命保険です。死亡した場合等の未返済残高全額が、保険金として金融機関に支払われ、事業主の家族などに返済義務が残りません。(生命保険なので、個人事業主の融資に設定しますが、法人の場合も経営者個人が連帯保証人となる融資であれば、設定できる場合があります)
加入は強制ではなく、任意です。生命保険といっても契約者は金融機関で、被保険者・保険料負担者が事業主です。あくまでも生命保険なので、個人事業主の場合事業経費とはなりません。(法人の場合は、経費になります)
また契約者が金融機関であるため、確定申告の際の生命保険料控除の対象外である点も注意が必要です。
さて、つまり団信は、借入金をかかえたまま事業主が死亡しても家族や従業員に迷惑を掛けないように、という意図で加入するものです。いざという時、残された方のことを思うなら掛けておくことをお勧めします。
ただ効果としては、借入金残高と同額の定期生命保険を返済期間にわたって掛けておいても、同様とはいえます。
ではなぜ団信をお勧めするかというと、掛金がかなり安くすむからです。
団信の掛金、状況によって金額は変わりますが、公庫のサイトにシュミレーターがあるので参考額を確認できます。
同額・同期間の生命保険の見積をとってみればわかりますが、圧倒的に安い保険料で保障を受けられます。
なおこの団信は、融資実行のタイミングでしか加入できず、後から個人で申し込むことはできません。
公庫の一般貸付についてはこの団信を付加できますが、マル経融資はもともと団信の対象外です。とはいえその分融資としては条件がいいので、元々団信をつける必要のない法人での借入の場合には、マル経を選択する結論でよいと思います。一方、個人事業主の場合には、この点は考慮が必要です。もちろんマル経のメリットを重視し、いざという時の備えは別途ご自身で手当する、という判断でもよいですが、申込み前に一旦ご検討をお勧めします。
おわりに
商工会・商工会議所は、小規模の事業主の方の活用できる様々な制度を揃えています。年会費も少額ですので、事業を始める場合には、活用できる制度など、地元の窓口へ気楽にご相談にいらっしゃることをお勧めします。
