米軍基地(の中の人)から仕事を依頼された

米軍基地に勤務するアメリカ人の方から仕事の依頼が来た、というご相談があったので、取扱いをまとめておきました。

消費税の問題です
事業上の取引があった場合、税理士としては主に2つの税金に関して検討します。法人税(所得税)と消費税です。
今回の場合、法人税(所得税)の観点としては、売上として計上することに大きな問題はありません。
問題は消費税の方。消費税がかかるのか、かからないのか、ちょっと迷ってしまったのでまとめてみました。

消費税がかかる取引とは
消費税がかかる取引を判定するためには、重要な原則があります。
・国内において
・事業者が事業として
・対価を得て行う
・資産の譲渡、貸付け及び役務の提供
この4つに当てはまる取引が、消費税の対象となります。

米軍基地とはいっても日本国内にある場所なので、今回の場合、この「国内において」の条件に当てはまります。
となると、国内で仕事として代金をもらって引き受けた仕事ですから、消費税のかかる取引とは言えそうです。

非課税取引
上記の条件に当てはまった場合にも、消費税法上「消費税は課さない」こととなっている取引があります。(非課税)
原則としては、消費税法第6条に記載のある取引を指し、土地や有価証券、金券の販売や、外国為替の手数料、保険の掛金などが該当します。

しかし、実はこれ以外にも消費税法以外の規定で非課税となる取引があります。
その例外の中に米軍に関する記載があった記憶があり、今回「?」となったのです。

日本の事業者側としては、国内と同じ取扱い
というわけで、日米地位協定(正確には「日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第6条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定」というらしい)を確認してみます。
外務省のサイト(https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/usa/sfa/kyoutei/index.html)で条文を見られました。

消費税の取扱いに関連しそうな記載は第十五条にありました。
「合衆国の軍当局が公認し、かつ、規制する海軍販売所~による商品及び役務の販売には、~日本の租税を課さず、~商品及び需品の日本国内における購入には、日本の租税を課する」
これは、米軍属者向けに基地内で行う販売には消費税を課しませんよ、ということになります。加えて、このような場合でも、仕入に関しては消費税を払ってね、という記載があります。

となると、こういった販売所やその他の機関に商品を卸したりサービスをしたりしたとしても、自身が米国公認の機関などではない限りは消費税について特殊な扱いはなく、販売代金については消費税を加算して請求することでよさそうです(米国の公認機関側でも一旦この仕入に関して消費税を払ってね、なので)。

もうひとつ、気になる法律が
この米軍と消費税の話題を調べていて、もう1つ、よく出ている話題がありました。
こちらは所得臨特法と呼ばれる法律に関するもので、正式名称は「日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第6条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定の実施に伴う所得税法等の臨時特例に関する法律」。日米地位協定と間違い探しみたいな名前ですね、ほんとわかりにくい。


さて、こちらは第7条に消費税に関する言及があります。
「~事業者~が次の~資産の譲渡等を行った場合には、消費税を免除する。
・合衆国軍隊又は~公認調達機関が合衆国軍隊の用に供するために購入するもの
・~契約者が締結した建設等契約~ために購入するもので合衆国軍隊の用に供されるもの~」
長いところをはしょったので「~」まみれですが、要は米軍に、直接軍務に必要な品物を納入する場合には売上に関する消費税を免除しますよ、となります。これは基本的に米軍そのものが相手方の場合の規定です。

さらにこの消費税の免除に関しては、軍から証明書を取得し、かつ7年間この証明書を保存することが必要です。
なおこの場合、消費税を「免除する」となっているため、厳密には「非課税」でなく「免税」という扱いとなります。
これは消費税の仕入税額控除の計算で取扱いが異なるので、自身が上記いずれかのパターンで請求額に消費税を加算しないとすると、「非課税」の話なのか「免税」の話なのか、を整理することが税金計算上は非常に重要になります。


日本の税法だけでは網羅できない租税条約等の規定は気をつけなければいけないです。

今回は米軍基地関係者とはいえ、個人的なお仕事の依頼に対応しただけなので、消費税に関しては国内で通常のサービスをした場合と同様の取扱いとなるようで一安心しました。
ただ、昔消費税の勉強をしたときに、ひたすら「合衆国軍隊の~」と暗記した覚えがあって、ああこれか!と現実とリンクしたのでなんだかスッキリ(それだけ暗記内容が身についていなかったってことですが)。

消費税法はそれ自体がかなり複雑化していて、国内の一般的な取引であっても取扱いに気を遣うのですが、国際的な取引の場合にはさらに相手国との租税条約等で特殊な取扱いがあるため注意が必要です。国際取引が多く発生する事業を営んでいる場合には、相手国との間の租税条約には一度目を通しておくことをお勧めします。

おわりに
この件、英語の請求書はChatGPTに相談しながら作りました!とのことで、時代を感じました笑。
というわけで、私もアイキャッチ画像を自動生成で作ってみました(米国旗っぽいけど米国旗じゃない画像)。

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