税務署から「おたずね」がきた

税務署から突然の封書、ちょっと心臓に悪いです。

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便りが届いて嬉しい相手ではないですが

ご家族が亡くなったとき、また大きな財産の移転があったとき、しばらく経って税務署から封筒が届くことがあります。普通郵便で、長形封筒に入っています。

封筒を開けると、中にA4の「○○税の申告等についての御案内」・「○○についてのお尋ね」という書類。
これを我々税理士は一般的に「税務署からの『おたずね』」と呼んでいます。

いただいて文句を言うのも失礼ながら、これが届いて嬉しい人は、いません。

というわけで、今回はこのお便りへの対応に関するお話です。

きっかけは、公的な情報の提供制度

税務署には、財産の移動に関して様々なルートから情報が届きます。

例えば、誰かが亡くなったという情報は、住所地の市役所から戸籍情報の共有がされます。

不動産の所有者変更があると、法務局から登記の変更情報が共有されます。

証券の売却や配当の受領があった場合、証券会社や株式発行会社から取引情報が共有されます。
(特定口座については年間取引報告書・一般口座については支払調書が提出されます。)

貴金属の売却があった場合、貴金属取扱業者から支払調書が共有されます。

保険金や退職金の支払があった場合、保険会社や勤務先から支払調書が共有されます。

邦人の国外にある財産(預金・証券・保険等)の変動があると、協力国の国税当局から情報が共有されます。
(この仕組みはCRSという名前で、現在参加国は108か国となっています。)

このような制度を介して届いた情報から、税務署が「あなた税金の申告が必要かもしれないですよ」という注意喚起のために送ってきた文書、これが「おたずね」です。

さて、中身を確認していきましょう。

いわゆる「税務調査」ではありません

最初に誤解のないようにお伝えしますが、これは「調査」ではありません。
どちらかというと、税務署の親切心から送られている案内です。

この「おたずね」は、主に「資産税」の対象となる取引に関して発送されています。

「資産税」とは相続税・贈与税・譲渡所得税など、「ふだんはあまりない」取引に関する税金です。
この「資産税」、特徴としては「納税者が申告に慣れていない」という点にあります。

「普段はしないような取引をされたわけですから、どんな税金がかかる?申告はどうやってする?など、わからないことも多いでしょう。だから念のために、前もって手続の手順をご案内しておきます」

これが税務署の連絡してきた意図です。

だから、日常的に事業を経営している人の所得税や法人税の確定申告に関しては発行されません。
また、申告期限がすぎていない(=まだ間に合うはず)タイミングで発送されます。

納税の必要がない人にも、きます

もうひとつ注意点として、この「おたずね」必ずしも納めるべき税金があるから届くわけではありません。

この通知を発行している時点で税務署がつかんでいるのは、「納税が必要そうな状況だ」というだけです。

税務署はたとえば相続財産について、金融機関などに照会をかければ遺産総額を把握することは可能ですが、この段階ではそういった個別の情報をしらみつぶしに調べ上げているわけではありません。

だから「おたずね」が届いたとしても、自分の把握している状況からして申告が必要ないのであれば、回答書にその旨を記載するのみで足ります。

ただこのような場合も、必ず回答はするようにしてください。

わからないなら、聞けばいいです

「おたずね」を読めば、何についての申告が必要なのかが記載されていると思います。

思い当たる取引があれば、その内容を「おたずね」に記載して返送すればいいです。

一方思い当たる取引がなかったり、何を回答すればいいかわからない場合には、あまり悩まず末尾に記載されている問合せ先に電話してしまえばいいです。
それだけで取り返しがつかない事態が起こるようなことは普通、ありません。

ともかく、「わからない・めんどくさい」と放置することが一番の悪手です。わからないのは当たり前で恥ずかしいことではありません。解決しようとしていることが伝われば、相談にはのってもらえます。

申告する予定の場合

さて申告への心当たりはあり、かつ準備をすすめている最中だという場合。
この場合には、「おたずね」の欄を逐一埋める必要はないです。

末尾に記載された問合せ先に連絡して、現在申告準備中という旨を伝えるだけでもよいですし、「おたずね」の余白などにその内容を記載して返送することでも足ります。

申告は必要ない or 判断がつかない場合

申告は必要ないと考えている場合、または判断がつかない場合には、「おたずね」の各欄を埋めて返送します。

例えば相続税の申告に関する「おたずね」の場合だと、下記のような順番で埋めていきます。

亡くなった方や遺族の氏名・生年月日などは市役所で戸籍や住民票を取得し、その内容を記載します。

次の、財産の価額を記入する欄については少し手こずるかもしれません。

不動産は、4月頃に届く固定資産税の通知書がお手元にあればその「評価額」を記載すればよいです。

通知書を紛失した場合には、市役所の固定資産税課の窓口で「名寄帳」を取得すれば確認できます。

但しこの場合、必ず「おたずね」に固定資産税通知書から記載している旨を明記してください。
(土地の場合、固定資産税通知書の金額と相続税上の評価金額は若干異なります。上記の内容は、あくまでも簡易的に回答するならば、という前提で記載しています)

株式や預金については、証券会社や銀行で残高証明を取得するのが確実です。
この場合金融機関窓口には、「相続開始日=亡くなった日の残高」で証明書発行を依頼しましょう。

生命保険金については、保険証券などがあれば、受取金額を確認できます。

車両は、中古車販売会社の査定等をとってその額を記入すればよいです。

税理士会の窓口もご活用ください

「『おたずね』自分で書こうとしたけど、何をどう書けばいいのか?やっぱり迷っちゃう。」という場合。

まず、あまり「正しい」回答にこだわりすぎる必要はないです。

まだ申告期限前ですし、財産の正確な金額は把握できていなくてもあたりまえです。
あまり悩みすぎず、把握できている内容をおおまかに書いて返送すればいい書類だと考えてください。

それでもやはり「自分ひとりでは対応しきれない」という場合には、地元の税理士会が毎月開催している無料相談などもご利用いただければと思います。→ 税理士会甲府支部の無料相談お知らせ

お悩み事が簡単な内容であれば、その場でご対応が可能です。また場合により、無料相談の範囲内(おひとり30分)での対応が難しい場合にも、適切と思われる選択肢をご案内いたします。

とりあえず、書類の「お問合せ先へ」

この「おたずね」、昔は管轄税務署の担当者から直接発送されていました。

しかし現在では税務署の分業化に伴い、各国税局の「業務センター」から発送されることが多くなりました。

業務センターは、近隣の税務署で共通に発生する事務作業を一斉にまとめて行うのが専門の部署です。
反面、個別の事案に関する対応は行っていません。

一般的な内容は業務センターへの連絡のみで足りますが、案件ごとの固有の事情に関する検討が必要な場合には、改めて管轄税務署での個別相談を案内される可能性があります。

管轄署での対応は、基本的に予約制です

「どうせ税務署対応になるなら、直に行っちゃった方が早い!」と考える方もいらっしゃるのですが、このような個別対応の案件の場合、税務署側でも事前準備が必要です。

いきなり行っても「窓口でパパっと答える」という対応はしてもらえません。

必ず、事前に管轄の部門に電話を入れて、予約をとってから出かけましょう。
またその際、状況を説明するための資料も持参されることをお勧めいたします。

忘れた頃にやってくる

今回ご相談があった事例は、相続発生後半年ほど経過してから送付されました。

相続の場合、死亡届を提出した届出人の方の住所宛に発送されています。
そのため、必ずしも喪主や代表相続人に届くわけではありません。

葬儀や四十九日などが終わって「やれやれ」となった段階で届くので、ちょっとびっくりしますよね。

「おたずね」が送られる案件の選定基準は明らかではないですが、対象取引があった方すべてでもなく、ある程度税額が発生しそうな見通しの方に向けて送られているようです。

この連絡が届いても、過度に委縮する必要はないですが、税務署側もあくまでも業務の一環として案内しているという点をご理解いただき、あまり感情的な対応はせず冷静に対処いただくことが一番かなと思います。

なお申告期限前に送付されるとはいえ、「おたずね」が届いた時点で、取引発生からはそれなりに時間が経っているはずです。

「おたずね」に関するご依頼をいただく場合には、お早めにご連絡いただければと思います。

おわりに

お役所の使う用語って、独特ですよね。
ふつうは「お尋ね」ではなく「お問合せ」っていう言葉を使うように思います。

あと印刷されている紙も、一般的な上質紙ではなくワラ半紙的な独特のヘロヘロ感。
この薄い紙、むしろどこで買えるんだろう…。

ただ、私の以前のブログでも取り上げたように、税務署を装う詐欺メールや文書が横行する昨今、
→ 国税庁から突然メール(詐欺です)

もしかしたらこの独特な言い回しや紙質が、詐欺被害を防いでいるのかもしれません。もしかしたら。

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