ふるさと納税_その2~返礼品を確定申告する場合とは~

ふるさと納税の返礼品、人にはよりますが、
「もらってうれしい!」ではすまない場合もあります。
今回は、主にふるさと納税を165万円~程度した方が対象のお話です。

もくじ

前回の話はこちら( → ふるさと納税_その1~いくら、しようかなという話~)

ふるさと納税、毀誉褒貶の激しい制度です

ふるさと納税の本来の目的として、総務省のサイトにこんな記載があります。
ふるさと納税には三つの大きな意義があります。
第一に、
納税者が寄附先を選択する制度であり、選択するからこそ、その使われ方を考えるきっかけとなる制度であること。それは、税に対する意識が高まり、納税の大切さを自分ごととしてとらえる貴重な機会になります。
第二に、
生まれ故郷はもちろん、お世話になった地域に、これから応援したい地域へも力になれる制度であること。それは、人を育て、自然を守る、地方の環境を育む支援になります。
第三に、
自治体が国民に取組をアピールすることでふるさと納税を呼びかけ、自治体間の競争が進むこと。それは、選んでもらうに相応しい、地域のあり方をあらためて考えるきっかけへとつながります。

・税金の使い方について納税者自身が考える機会となること
・自分の暮らしている地域だけではなくそれを支える地域への支援となること
・各地方自治体の個性を際立たせる原動力となること、
これが本来のふるさと納税の目的でした。


この制度が本格的に動き始めたのが2008年、そこから20年ほどが経過した現在、ふるさと納税についてはさまざまな評価があります。地方から見れば貴重な収入源でありつつも、この制度に依存することで制度上のゆがみも見えてきています。一方人口の集中する大都市からは本来の税収の簒奪ではないかという意見もあります。

日経に面白いサイトがありました

ふるさと納税のリアル 全市区町村の実質収支マップ
各市区町村のふるさと納税収支に関するマップです。日本地図上に、資金の流入の方が流出より多い自治体は赤、一方資金の流出の方が多い自治体は青で表示されています。
山梨周辺は、甲府市・山梨市などが収支のプラスが特に多く(2025年時点で40億程度)、県全体で見ても収支はプラスとなっている自治体が多いです。

一方首都圏をはじめ、人口の密集する大都市圏では多くの市町村が収支マイナスとなっています。たとえば世田谷区は収支が▲114億、横浜市は▲70億などとなっています。
とはいえこの数字は単純比較できなくて、甲府市と世田谷区ではそもそもの行政規模におよそ5倍の開きがあります。(甲府市:人口18万人、住民税税収:310億円↔世田谷区:人口93万人、住民税税収1,400億円)

とはいえ、規模が小さな甲府市にとってはふるさと納税は貴重な財源であること、母体が大きいといっても、歳入見込の住民税が10%近く流出している世田谷区にとっては心穏やかには受け止められない制度であることはおわかりいただけるかと思います。

そんなわけでふるさと納税、山梨についていえば歳入の確保に重要な役割を果たしていますが、この過程では過熱する自治体同士の返礼品競争や返礼品の産地偽装、中間事業者への財源の流出など、制度に関する問題点の指摘も多くなされています。現状の制度がこのまま続く保証もないまま、この制度に依存してしまうことはいずれの自治体にとっても必ずしも歓迎すべき状況ではありません。

さて、ふるさと納税でなにかと話題になる返礼品について、税務上の話題もあるので、今回はそのお話をしたいと思います。

返礼品の時価は法律で決まっています

ふるさと納税で受取る返礼品、その時価には制限が付されています。
地方税法第三十七条の二(寄附金税額控除)
「都道府県等が~返礼品等の調達に要する費用の額として~算定した額が、いずれも~寄附金の額の100分の30に相当する金額以下であること。」

ふるさと納税の返礼品は、寄附金の額の30%以下の時価でなければ認めない、という規定です。この制限規定がある結果、ふるさと納税を100万円した場合に受取る返礼品の時価は最大でも30万円以下であるはず、ということになります。

この基準を越える返礼品を設定した場合、ふるさと納税制度の対象として総務大臣からの許可が下りず、したがってその寄附に対しては「寄附金控除に関する証明書」を交付することができないため、ふるさと納税をした納税者が不利益(寄附金に相当する税額控除を受ける事ができない)を被ることになります。

一時所得の考え方

税金の世界では、臨時的に発生した収入であっても所得の一部として課税するという考え方があります。10種類の所得のうちのひとつ、「一時所得」です。

国税庁のサイトで「一時所得」の代表例としてあげられているのは、
・懸賞や福引きの賞金品
・競馬や競輪の払戻金
・生命保険、損害保険の一時金等
・遺失物拾得者や埋蔵物発見者の受ける報労金等
 など。

ふるさと納税の返礼品も、この「賞金品」に類するものとして、一時所得の課税の対象となります。ただし、すべてが対象となるわけではありません。

一時所得については、所得の計算方法が独特です。
総収入金額▲収入を得るために支出した金額特別控除額(最高50万円)=一時所得の金額
ふるさと納税返礼品に関しては、総収入金額は = 返礼品の時価と考えます。先述の通り、寄附金の額の30%相当額です。

ここからする「収入を得るために支出した金額」は、寄附金のことではありません。寄附金は本来返礼を求めるものではなく、この支払に返礼品の原価としての性質は認められないからです。ふるさと納税の場合については、この「収入を得るために支出した金額」は、0円と考えてください。

特別控除額は、基本的に50万円。従って総収入金額が50万円以下の場合には、この時点で一時所得はゼロとなります。

問題は、一時所得とみなされる返礼品の時価が50万円を超えてしまった場合。
この場合、返礼品の時価を所得に含めて申告しなければ所得税の納付もれとなります。

給与所得の場合、年収4,000万円程度から注意が必要です

では、寄附金の30%が50万円を超えるのは、ふるさと納税をどのくらいした時と考えればよいでしょうか?単純に、50万円 ÷ 0.3 = 166.6…万円となりますので、ふるさと納税を165万円程度した時ということになります。そして、ふるさと納税の「上限額」がこの金額を越える方は、おおよそですが年収4,000万円前後がめやすとなります。
このような場合、ふるさと納税の30%相当額▲50万円した金額を、確定申告書の「収入金額等→一時所得」の欄に記載することが必要となります。

但し、その年1~12月の間に、ふるさと納税返礼品以外にも一時所得の性質に該当する収入がある場合には、この収入も合算して一時所得の計算を考えます。そのため、このような場合には、(ふるさと納税の寄附金の額×30%の金額+他の一時所得の収支)▲50万円の算式で、一時所得分の申告要否を判定する必要がある点、ご留意ください。

ただ、実際この分の税額負担が重いかというと

さて、一時所得の金額、そのまま所得税の対象となるわけではありません。
この所得の扱いはかなり独特で、上述の算式で計算した一時所得の金額を、さらに1/2して、所得税率(総合課税)を乗じることとなっています。
確定申告書の「所得金額等→総合譲渡・一時」の欄には、この1/2後の金額を記載します。

例えばふるさと納税返礼品の時価が100万円で特別控除▲50万円を控除して一時所得が50万円であった場合、所得税がかかる金額は(100万▲50万)*1/2 = 25万円だけです。200万円の場合は、(200万▲50万)*1/2 = 75万円。おわかりのように、一時所得は他の所得と比べて、かなり税負担が軽減される結果となります。

これは、それぞれの人の負担能力に応じて納税を課するという所得税の前提から、臨時的な収入である一時所得は、あくまでも「たまたま」入っただけの収入なのだから、苛烈な課税はすべきではない、という考え方に基づくものです。同じような考え方は、長年の勤務の結果として一時に受取る退職所得や、山林所得、譲渡所得の一部にも見られます。

所得税法は法人税法と異なり、所得だけで10種類に分かれており、それぞれ個別の計算方法や税率を適用して計算します。申告する際、これを「わずらわしいな!」と感じられることもあると思いますが、この構造は納税者の個別事情や立場に寄り添う考え方に基づいた、むしろ合理的で優れた仕組みとご理解いただければと思います。

どこまで突き詰めるかはお任せしますが

さて、でも、ここで変な感じがしてきませんか?

給与や事業、その他今年の所得を仮集計して、「今年はどのくらいふるさと納税できるかな?」と計算しましたよね。そのふるさと納税をしたら、所得税と住民税はこのくらい下がるな、と思っていましたよね。

でも今、返礼品のせいで想定外に所得が増えてしてしまいました。
一時所得はその計算過程でかなり金額が圧縮されるとはいえ、計算結果がゼロでない以上、せっかく計算したふるさと納税の元となる所得が変わってしまったわけです。
となると、その分、ふるさと納税の余地もさらに増えます。

というわけで、この一時所得分の増税額を含めて、再度ふるさと納税の限度額を探らなければなりません。これについて一発で出せるベストな算式は、おそらくないです。一旦返礼品なしの限度額を計算し、そこから住民税の所得割を計算し、これを元に再度限度額を算定し、とちょこまか金額を調整して、限界を探るしかないのかな、と思います。

どこまで限界を極めるか、ここはご判断にお任せしますが、いつだって将来は不確定なもの、少し余裕を残した額までのふるさと納税にしておくのが、心の安定という面ではよいのかな、とは個人的に思います。

世の中にはいろんな状況の方がいます
たとえば2021年、前澤友作氏がふるさと納税を計87市町村に対し、総額10億円行ったということで話題になりました。この時は返礼品は辞退したようです。

またふるさと納税サイトの返礼品検索をしてみると、1,000万円超の場合の返礼品が427件、1億円超の場合の返礼品も17件、検索結果が表示されました。返礼品があるということはこの額の寄附をする人がいる、ということ。

ただ、このレベルの寄附額になると、いちいち自分で寄附先を探すのも大変でしょう、ということで、「あなたに最適な寄附プランのご提案から寄附の代行までお任せ下さい」と謳うサイトも登場しています。ご利用は年間寄附額50万円から。
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もはやここまで来ると、冒頭にふれた「ふるさと納税の三つの意義」から見ると、いかがなもんかという感を禁じ得ないところもあります。

ただ、このような額になってくると、もはや返礼品は不要、という方もかなり多いようです。返礼品をもらわなければ一時所得の申告に関する悩みもなくなるわけなので、これもこれで、ひとつの選択肢です。

税務調査で指摘された話は、よく聞きます

ふるさと納税の一時所得申告もれ、税務調査の際に指摘されたという話は、税理士仲間からけっこうな確率で聞きます。もちろん本来の所得が相当額ある場合に問題となる論点ですので、指摘事項のひとつとして、ということではありますが。

時価の算定に関しては妥当な範囲内であれば細かいことは言われないが、そもそも計上していない場合には高確率で指摘が入る、という印象のようです。
そのため、ふるさと納税額が一時所得の対象となりそうな場合には、個々の返礼品の時価にあまり厳密にこだわらず、とりあえず時価相当額として30%相当額を記載することで、実務的にはよいのではないかと考えています。

高所得(年収1億円超)の方は、注意しておいてください

この記事を書いている2025年12月の時点では速報段階ですが、ふるさと納税の上限額に制限を設けようという案が出ているようです。目安としては年収1億円から、主に住民税の控除額に限度を設けることにより、高所得者層に限りふるさと納税の上限額にあらたな制限を加える方針です。

この改正に関しては2027年のふるさと納税からが対象となる見込のため、高所得者のふるさと納税について、上記で紹介したような多額の返礼品が設定されるのはあと1年の間となりそうです。

高所得者層の数少ない節税策です

2018年から、合計所得900万円を超える納税者について、配偶者が所得要件を満たしていても配偶者(特別)控除を逓減、または0とする改正が開始されました。
2020年から、合計所得2,400万円を越える納税者については所得税の基礎控除を逓減、または0とする改正が入りました。

このような改正の結果、高所得者の所得税に関しては、他の所得層が適用している控除が適用されず、「働き損」といわれるような状況が生じています。今回さらに、数少ない節税策として残されていたふるさと納税まで制限をかけるのは、はたして適切な判断なのか、疑問に思うところはあります。

おわりに

金額が大きい返礼品をながめていると、中には少々換金性の高すぎるもの(「金の文鎮」と名乗る、延べ棒によく似たものなど)もあるようです。

2025年の当初から年末にかけて、金価格は約1.5倍に高騰しました。
この「文鎮」、返礼品としての指定があったらその時点から製作を開始するようなのですが、寄附した当初は300万円相当の時価だったとして、納品されるときまでに時価が高騰して450万円相当になったとしたら、一時所得としてはどちらの金額を取るのが適切なのか…?などとひとしきり妄想して悩んだり、しました。
(なお、私個人としてはさしあたり、そのような寄附をする予定はありません。)

不要な論議を避けたいのなら、返礼品として選ばれるものは換金性の高すぎないもの、または逆に価額の明記された商品券などを選ぶのが安全かもしれません。

さて、次回はふるさと納税の収支がどうしても合わないパターンのご紹介、その他書き切れなかった細かい点に触れて、この稿をおしまいにしたいと思います。
( → ふるさと納税_その3~寄附金と減税が一致しない!その他~)

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